深い河で沐浴

うわ!!!面白かった!!!

 

今週描き終えたプロジェクトの中で、遠藤周作の小説『沈黙』に触れてて、「あ、読むなら今だ」と思って借りてきたディープリバー。

 

これは長崎のキリスト教弾圧を舞台にした遠藤周作の代表作。

『深い河』は『沈黙』と地下で繋がってるハナシ、というか、『沈黙』に対するアンサーソングなんじゃないか?

 

もちろん、時代も背景も舞台も全然違うけど。

 

 

妻の遺言、生まれ変わるから私を見つけて、という約束を果たすため。

自分の中にある破壊的な衝動と虚しさに、答えをくれそうな気がして。

動物や鳥との交流にいのちを支えられた恩返しがしたくて。

朋を弔うため。

 

インド旅行のツアーで一緒になった、それぞれの参加者が主人公。

 

 

「でもわたくしは、人間の河のあることを知ったわ。その河の流れる向うに何があるか、まだ知らないけど。でもやっと過去の多くの過ちを通して、自分が何を欲しかったのか、少しだけわかったような気もする」

 

「信じられるのは、それぞれの人が、それぞれの辛さを背負って、深い河で祈っているこの光景です」

 

「その人たちを包んで、河が流れていることです。人間の河。人間の深い悲しみ。そのなかにわたくしもまじっています」

 

『深い河』遠藤周作

 

 

今年に入って、というかここ数ヶ月?のインド推しがすごい。なぜ?(笑)

仲良くさせてもらってる友達家族がインドに住んでたとか、習い事で出会った人がインド通だったりとか、お友達におすすめされてどハマリすることになったサマハンもインドのスパイスドリンクだったし。

 

毎日コーヒーとか紅茶に混ぜて啜ってるサマハン。いつも買いに行ってるインドスーパーで品切れにしたのは私。

 

 

読みながらちらちら思い出したのが『豊饒の海』。

 

転生がテーマの三島由紀夫の4部作。そういえばインドも出てきたな・・・!

 

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『豊穣の海』では転生について、ひとつの灯明に例えてこんなふうに言っていた。

…輪廻転生を、一つの灯明の譬(たとえ)を以て説き、その夕べの焔(ほのお)、夜ふけの焔、夜の引き上げに近い時刻の焔は、いずれもまったく同じ焔でもなければ、そうかと云って別の焔でもなく、同じ灯明に依存して、夜もすがら燃えつづけるのだ…

 

縁生としての個人の存在は、実体的存在ではなく、この焔のような「事象の連続」に他ならない。

 

「私」を生きてるいのちってのは、ろうそくの明かりみたいに、その瞬間瞬間は全く別のものだけど、トキを通して繋がるひとつの火でもあるってこと。

 

 

今回【宇宙からのギフトを読み解くプロジェクト】お届けしてすぐ、感動の余韻を残したまま読み始めたわけだけど、そうか、これもまた繋がっているのか。

 

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「転生」、「信仰」っていう表現で語られていたけど、メッセージがすごく重なってて驚いた。これもまた、火の継承。(ほら、物語の種がまたここに・・・)

 

三島由紀夫の『豊穣の海』はシリアスで重厚だったけど、『深い河』はテーマとは裏腹に、すごく、なんというか、軽やか?読みやすいっていうのかな。遠くのハナシをしているのに、すごく自分に近い感じだからだろうか。深遠なことを語るぜ、って重さがない。

 

途中、あの人も出てきた・・・よね・・・?

 

美しくごまかさない、って視点が好きなのかな。

偽善で取り繕わないむき出しの生命の醜さ、そこにある美しさと言うか。

 


一行はインドの寺院で祀られていた女神像を、見る。
清純でも優雅でもなく、美しい衣装もまとっていない。逆に醜く老い果て、コブラに噛まれサソリに刺され苦しみに喘ぎ、それに耐えながら、萎びた乳房で人間に乳を与えている女神チャーナンダー。

 

神聖さというと清潔で清らかで上品なものを想像してしまう(特に西洋的な思想)けど、生命って、もっと混沌としてるよね。

生命力そのもの、生命の源、「母なるもの」と言われる存在って、聖母マリアみたいに清らかで美しくどこまでも包容力のある存在として描かれるけど、それは一側面だよね。

 

聖母マリアに女神チャーナンダー、それはスパッと分別できる存在じゃないんだと思う。

 

ユング心理学で言うグレートマザーの裏表。

 

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すべてを抱き込み流れる河・・・死も、生も。喜びも、苦しみも。

あぁ、これって「トキ」じゃないか。

 

蛇行するうねり、人間の河をホロスコープ上で言うなればノード軸。ドラゴンテイルとドラゴンヘッドを繋ぐ河。

 

河の水しぶき、ひとつぶのしずくに反射したあれやこれが、人間ひとりの一生なのかもしれない。だとしても、いやだからこそ、私はそれをおもしろがりたい。

 

「君はのちのちすべてを忘れる決心がついているんだね」

「ええ、どういう形でか、それはまだわかりませんけれど。私たちの歩いている道は、道ではなく桟橋ですから。どこかでそれが終わって、海がはじまるのは仕方がございませんわ」

 

 

 

いつか舞台をおりるとき、いつか海に還るとき。

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ってなわけで!

よみます、よびます、隕石を☆彡

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「分かんなくてもいいけど、とにかく、わたしたちは、聴いてる人に自分たちの歌を届けようとは思ってないわけ。

ましてやメッセージを押し付けようとも思わないし。
絵描きの絵とかも一緒じゃない?

テーマとか意味とか質問するのに意味はないのよ。
かといって伝えたいことがないわけじゃなくてね。
隕石としか言いようがないけど。

わたしたちの歌は、空からでっかい意志を運んでくるわけ。
聴いてる人の胸にその隕石をぶつけるの」


「隕石ってのは、『遠くから降ってくる大事な感覚』のたとえだよ」

 

― SOSの猿 (中公文庫)