物語の登場人物は、ひとつの世界の中に「創り出された」ことを自覚する者たち。
現れるのも、消えるのも、創り手である「魔王」の気分次第なのだから、と恐れ諦める者たち。
ある者は創り手の「創造の力」を盗み出して、自分が創り手になってやろうと企む。
またある者は、思うままになるもんかと反逆する。
またある者は、創られた贋物の世界を、本物に創り変えようとする。
物語の中に生み出された人々が、生き延びたいと願うなら…
それはプロット、ストーリー上で生き延びるという意味を超えて、「存在すること」を願うなら…
物語は生き延びるために、語り手を求める。
好きすぎて、🇸🇬の書店でも(原価の2倍…!)買っちまったモリミンの『熱帯』。2周目、読了。
語られることでいのちが吹き込まれる、生き延びることができるという「創造」の側面を描く『熱帯』に対して、『雲上雲下』は消えゆく小さき者たちにスポットライトをあてた物語だったなぁ、と思い出す。
神話や伝説を語る者がいなくなれば、彼らの世界は、彼らの存在は消滅する。
消えかかる世界をつなぐ、物語。
物語は存在の命綱。
ジョン・コナリーの『失われたものたちの本』も、(全く別の世界観ではあるけど)このまなざしに重なるなぁ!
物語の物語で王道ファンタジーといえば、エンデの『果てしない物語』!!
映画は、物語の中に登場する物語、の部分。マトリョーシカみたいな入れ子構造に目が回る…たまらん。
それってさ、特定の物語、書物でも口承文芸や創作物だけじゃなく、わたしたちのリアルライフもそうなのよ。
ある意味このライフだって、宇宙の(この世を形作る大枠の構造)創造物であるわけだし。
クリスチャン的なイメージを持ってこなくても、別にファンタジーでもなんでもない事実、現実でしょう。
昨日は『熱帯』をよみながら、改めて「創造の魔術」に思い馳せておりましたところ・・・
LINEのメッセージで、すごいのん紹介してもらいまして!
「そうぞう」のくだりが、どんぴしゃに☄
Stay Foolish、The Foolはなにもない、始まり。
そこは見渡す限り何もない空漠たる世界だった。しかしよく考えてみたまえ。
何もないということは何でもあるということなのだ。
魔術はそこから始まる
ー『熱帯』森見登美彦
0番The Foolから始まるタロットの1番は、The MAGICIAN魔術師。テーブルの上に並べられた世界の素材、4大元素。魔術はそこから始まる。世界はここから創造される。
宇宙船地球号・・・SOS(Save Our Ships)、汝語ることで自らを救え。
目の前に現れるすべてのことが伏線。
こんなにうまいこと、すべてが繋がるもんなのか?
もしかしたら、単に「自分が勝手にそこに意味を見出している」「結びつけている」だけなのかもしれない。
そうだとしても、そうだからこそ、人生は「意味」(オモシロミ)がある。
ここは創造の孵化場!!
そして壮大な実験。
自分が創りだしたのか、それとも自分が創りだされたのか。
おそらくどちらも正しいのであろう。
我々はたがいを生みだしあったのである。
ー『熱帯』
世界は、このコトバに集約されるな。